福井大学 総合教職開発本部

本部概要

本部長挨拶

福井大学
総合教職開発本部 本部長
松木 健一(まつき けんいち)

「総合教職開発本部」とは何を目指した組織なのか

現在、教育ではLearning Revolutionが粛々としかも着実に進行している。グローバル化が進んだ現代社会では、DiversityとInclusion、地球環境保全といった課題の解決を抜きにした経済政策は成り立たない。また、産業構造自体もDX(Digital Transformation)によって、その構造を大きく変えようとしている。 これまでの社会では、知識・技能を習得すること、および、それを実行できる努力と勤勉性を持つことが、青年にとって、最も適した社会人としての準備状態をなしていた。ところが、誰もが気楽に携帯できるDeviceを持ち、いつでもどこでも様々な情報にAccessできるようになった今日、学習活動では「今何が問題なのか」「その解決にはどのような手段で、誰と協力して、どのように解決すればよいのか」、そして、実際の取り組みに障壁がたちはだかったときに「Resilienceを発揮できるか」といった対処能力の育成が求められている。「覚える」勉強から「主体的な学び」への学習観の転換である。これに付言するならば、少子高齢社会でありかつ人生100年時代では、社会変化に対応して「生きている限り働き続けること」がWell-beingと感じられる社会をつくりだすこと、つまり、個に視線を向けるならば「学び続けることができる」資質を持つことが最も希求される学習活動となっている。  この情勢変化に伴い、子どもにかかわる教師に求められる資質・能力も変化してきている。教師は今までのような「教えの専門家」から、「学びの専門家(学びを組織する専門家)」への転換が求められ、「生涯学び続ける」資質を持っているかが問われるようになってきた。したがって至極当然のことであるが、大学における教員養成も大きく転換しなければならない。  ところがこれが難しい。大学は現行の教員免許法が求めるContentsを提供しなければならない一方で、「新しい学び」を実行しなければならないからである。就業前4年間の学生教育に従事しながら、学び続ける教師を支援できる体制を構築しなければならないからである。そして、大学キャンパスから飛び出して、地域のNeedsに応える教育を実装し、同時に、「日本型の教育」を世界にアピールしなければならないからである。特に教育立県を目指す福井では、世界から評価を受けることは地域創成のBrandとなることができるから、社会共創を目指す地方大学として避けて通ることはできない。しかしながら「新しい学び」の実施は、人手があるならばまだしも、少子化に伴う教員養成の縮小、大学教員の削減の荒れ狂う嵐の中で、実現しなければならず困難極まりない。  さて、どうするか。福井大学では、教育学部及び連合教職大学院の教員数を法令の許す範囲で縮小し、20名規模の教員からなる全学組織の総合教職本部を設置した。Goalはただ1つ、「新しい学び」を実現することである。同本部の教員は従来の学部教育や大学院教育の業務を一部縮小しつつも遂行し、Effortを明確にした上で、教員研修・教育の海外展開や地域貢献等を新たな業務として位置づけることにした。また、FD(Faculty Development)・SD(Staff Development)及び教職協働の実施を通して、教育学部・連合教職大学院・総合教職開発本部のCollaborationの常態化を作り出すことを目指す。さらに、同本部が全学組織であることから、大学執行部と教員養成部門を直結することができ、Speedyに課題解決のできる組織づくりを目指す。これが総合教職開発本部設置の狙いである。Easier said than done. 総合教職開発本部の真価が問われている。

「総合教職開発本部」では何をしているのか

総合教職開発本部の目的は、学び手が主体となる学校教育を創造し、その学習活動をFacilitateする教師を、その教師のLife stageに即して支え続けることである。同本部ではこの1つのGoalに向かって、3つのTargetを設定し、SDGsに倣ってBackcastingで迫ろうと思う。 (国際教職開発部) 1つ目のTargetは、日本型学校教育の海外展開である。一見すると、このTargetは総合教職開発本部が目指すGoalとは無縁のように思われる。しかし、学び手が主体となる授業実践を進めながら、それを支える教師の学びを組織し、学校での実践と教師の研修をリンクさせたシステムを構築することは、同本部の目指すGoalそのものである。また、世界が求めるGoalでもあろう。ところが、国内ではこれが様々な制度や組織のしがらみがあって、構築に困難が付きまとってしまう。そこで、国際教職開発部ではアジア・アフリカ諸国の教員研修を積極的に受け入れ、国内の優れた授業実践とそれを支えようとする本学の取組みを見ていただきながら、自国での取り組みに再構成する研修を組織し提供していこうと思う。そして、逆にその進展を鏡にして、学校づくりと本学の取組のリンクに照射することで、「新しい学び」を推進させようと考えている。 (地域教職開発部) 2つ目のTargetは、現職の教師が学び続けることのできる仕組みを構築することである。これまでの大学では就業前4年間の準備教育が中心であったが、教員研修や連合教職大学院の取組みを足掛かりに、ヒトの全てのLife stageで「学び続ける」ことをサポートすることのできる組織づくりを地域教職開発部では目指している。これまで連合教職大学院では「学校の課題を、学校で、同僚と協働して解決する」学校拠点方式を15年にわたって推進し、実績を残してきている。この意味で地域教職開発部の取り組みは、Backcasting とForecastingの合わせ技となっている。 (インクルーシブ教育部)  3つめのTargetは、DiversityとInclusionを具現化した主体的な学びの構築である。優れた才能を持つ子どもの中には、社会生活全般には関心を持たない子や、特定の分野には苦手意識を持つ子がいる。ややもするとその関心の狭さゆえに社会的不適応を起こし、せっかくの才能を開花できないでいることがある。本学の附属学校園では、大学の特別支援教育担当教員や医学部教員と協働しながら、そのような子どもの特別入試枠を設定し、幼児教育段階から義務教育学校9年生までの12年間をサポートする体制を構築してきた。一方、本学の附属学校園では、伝統的にPBL(Project-Based Learning)がカリキュラムに位置づいており成果を出してきた。このPBLのような学びは、子どもそれぞれの様々な特性を活かした学習活動に適した学びのスタイルである。インクルーシブ教育部では、このような通常の授業の中で、DiversityとInclusion、つまり一人一人の特性を活かした授業づくりを進めるべく、早期からの保護者相談、大学教員と学校教員が連携した授業づくり、公立学校への普及の検討等を目指して活動を進めている。

福井大学 総合教職開発本部 総合教職開発本部

〒910-8507 福井県福井市⽂京3丁⽬9番1号
TEL / 0776-27-8997(事務室)
E-mail / gpdt-all@ml.u-fukui.ac.jp